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メールマガジン

No.68 2013年4月25日発行

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   日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 
   第68号  2013/4/23
☆☆☆★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★☆☆★☆☆
 編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目 次
◆第16回年次大会報告
◆第16回年次大会研究部会の報告
◆第16回年次大会の写真集

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◆第16回年次大会報告
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事、アルシノーバ代表 進 博夫)


 3月9日、良く晴れた朝、渋谷駅南口から明治通りを南下し、東にまっすぐ
坂を上っていくこと15分で國學院大学に到着。昨年11月に130周年を迎え、構
内に神殿のある唯一の大学。然しながら構内は近代的校舎が立ち並びます。
120周年記念事業で神殿を除き一新されたそうです。

 会場の学術メディアセンターホールは設備も新しく落ち着いた雰囲気。東側
全面の大きなガラス窓のブラインドには朝の陽光に外側の植栽が影を落として
いて、まるで墨絵のような趣でした。

 さて、9:30の定刻に久米克彦氏の司会で開会。以下、ご報告です。


9:30-10:00 開会ご挨拶
開会ご挨拶 大会委員長 秦 信行氏(國學院大學経済学部教授)

 秦先生は経済学部でベンチャーファイナンスがご専門とのこと。早稲田大学
から國學院大學に戻られた花堂先生とは旧知で、お二人の先生には今大会開催
にあたり大変お世話になっています。

ご挨拶要旨:國學院大學は神道の研究・教育機関を母体として設立され、昨年
創立130年を迎えた。國學院大學と皇學館大學には神社本庁の神職資格が取れ
る神職課程があるが、構内に神殿があるのは國學院大學のみ。創立120周年を
記念して全面改装し、最新設備の都心型校舎へと学修・教育環境が整備された。
國學院大學は日本人の依って立つ基盤を自覚し、グローバル化の変化対応可能
な人材育成を目指している、とのこと。新たな知を論じる学会の大会でこの場
を活用いただくのは有難い。活発な議論を期待する、と有難い言葉で締めくく
られました。

開会ご挨拶 日本ナレッジ・マネジメント学会副理事長 高梨 智弘氏
要旨:体調不良の森田理事長に代わり、ご挨拶。今16回大会は、花堂先生と秦
先生のご尽力で実現した。過去を踏まえて、先を考えるのにふさわしい場であ
る。経済の先行きも明るくなっている今、改めて経営の質の問い直しが必要で、
文科省や経産省でも人材育成の議論が活発である。本学会でも、各研究部会で
の活動に加え、年初からエーザイの高山さんによる「組織変革実践研究プロジ
ェクト」がスタートした。その他、経営関連学会協議会に参加。4月末には第
5回TKF2013 ロシアを予定している。


午前の部 司会兼コメンテーター 大西 幹弘(日本ナレッジ・マネジメント
学会理事、名城大学経営学部教授)

10:00-11:00 基調講演
『先人の叡智に何を学ぶか‐歴史記録にみる貞観地震と日本の社会』
岡田 莊司 氏(國學院大學神道文化学部教授)


 2日後にあの大震災から2年目を迎えるという日に、古来、自然災害をどう捉
え、伝えてきたか、神道という信仰を通して考える、という時宜を得た講演で
した。以下にまとめてみます。

 岡田教授の属する神道文化学部は、神道と他の宗教を多角的に比較研究する
ユニークな学部。

 神道には経典がなく、伝承により受け継いできました。自然のあらゆるとこ
ろに在るとされる神の象徴は、自然の山や石や滝です。神は地域を守護する一
方、自然災害は神の怒り、祟りとされてきました。自然と神には恵と禍の両義
性があり、「私」との繋がりも生まれます。神と自然と人間は相互に結びつい
た関係を保ってきたのです。古事記や日本書紀をはじめとする様々な資料には、
災害現象や祟りを鎮めるためのお祓い等の記述が見出されます(一部は地下資
料館に展示)。

 平安初期、清和天皇の貞観年間には疫病、地震、富士山大噴火等厄災が相次
ぎました(『三代天皇実録』)。紹介された869年(貞観11年)の貞観地震と
津波の記録は実に凄まじいものでした。その年末には伊勢神宮奉幣が行われま
したが、その告文に「神明之国」の記述があり、この辺りから神国意識の形成、
日本的文化の醸成が始まったと考えられるとのことでした。

 ところで、過去の津波の浸水線を辿ると、古い神社は平地にはなく多くの神
社は被害を受けず残っており、これは古代から伝わるメッセージだそうです。
ちなみに國學院大学も、元は渋谷川が流れる谷だった渋谷から坂を上った高台
にあります。

 日本人は悪いことはお祓いして忘れ去ろうとする。いい思い出に前向きに生
きる、ということであろうが、歴史から学んだ知恵を活かしていくことが大事
である、という岡田教授の締めくくりでした。


 大西先生から「百人一首にある『末の松山浪こさじとは』は、貞観の大浪も
末の松山(多賀城付近)を越えることはなかった、の意で、悪い思い出もきち
んと記憶に残すべき」とのコメントがありました。確かに、百人一首を学校で
学ぶ際、貞観津波も関連づけることには大きな意味がありそうです。


11:00-12:00   特別講演
『伊勢神宮の式年遷宮に学ぶこと‐<常若>の理念を社会に活かす』
報告1「神宮の式年遷宮の概況と<常若>の理念」
稲 貴夫 氏(神社本廰 本宗奉賛部長・伊勢神宮式年遷宮広報本部事務局長)

 伊勢神宮の正式名称は「神宮」であり、神社本廰は「神宮」を本宗と仰ぎ、
全国の神社を包括しています。稲氏は、一般向けの話は通常されないとのこと
で、まさに特別講演でした。

 伊勢の神宮には、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が皇大神宮(内宮)
に祀られ、食物・穀物を司る神、豊受大御神(とようけのおおみかみ)が豊受
大神宮(外宮)に祀られています。天照大御神の誕生から高天原の天孫降臨、
三種の神器と宝鏡奉斉の神勅、大和から伊勢に移り祀られたこと、豊受大御神
はそのおよそ500年後に御饌の神として丹波から移り祀られたことなど、日本
神話の世界から現在の神宮祭祀(さいし)に至るその由来の説明がありました。

 神宮のお祭りとして、神嘗祭など毎年行われる祭りの他、遷宮の年に行われ
る遷宮祭があります。大神嘗祭とも呼ばれ、今年がその年にあたり、式年遷宮
が行われるのです。

 <常若>の理念を継承する式年遷宮は、室町時代の戦乱期の130年間を除き、
現在まで1300年以上継続されています。なぜ、20年ごとに社殿を含め全てを
一新するのか。社殿尊厳保持説、世代技術伝承説など5つほど説があるが、確
定的な理由はないようです。

 用材の調達や、建築基準法には違反する建築の技、その他特殊な必需品制
作の技を永年確保していく努力が課題であるとのことでした。


報告2「<常若>の理念を写し撮る」
稲田 美織 氏(写真家、エッセイスト)
稲田氏は1991年からニューヨークを拠点に日本をはじめ世界各地を飛び回っ
て活動中です。

 通常、女性は入れないネイティブ・アメリカンの聖地、フォーコーナーズに
初めて入った女性写真家。2001年、9.11のWTCの惨事を目撃し、なぜ宗教を巡
った争いが起きるのかを考え、世界各地の聖地を巡り、聖地とそこに生きる人
たちを撮りはじめたそうです。

 講演では約60枚の写真を次々と紹介。素直で軽妙な語り口で進めていきます。
写真はどれもすっきりと清潔感のあるものばかり。歴史的背景や本質的意味は
踏まえつつも、宗教観とか理屈を超えた真摯で清冽な想いが、それらの感性豊
かな写真から伝わってきました。

 「伊勢神宮の式年遷宮はNYで花堂先生から勧められ、2005年から撮りはじめ
た。初めて伊勢神宮を訪れたとき、清浄な神宮の森に深い感銘を受けた。自然
の中、あらゆるところに霊的なものも存在する。森、水、雲、山、すべては循
環する。経済大国も経験した日本は恵まれた国です。この奥深さは世界に通用
するはずだ。そう思いつつ活動しています。」

 稲田氏の、世界を見ているピュアな眼差しから伝わってくる知は私たちを勇
気づけるものでした。


12:00-13:00   【 昼 食 】 

13:00-13:30   会員総会


研究報告 司会 植木 英雄(日本ナレッジ・マネジメント学会理事・
知の創造研究部会長、東京経済大学経営学部教授)


13:30-14:05  研究報告1
「共通善を目指す企業理念活動」
高山 千弘氏(エーザイ(株)理事知創部長)


 高山氏の報告は、患者様第一から。乳がん治療薬ハラヴェンにより劇的に人
生が変わった、と感謝する米女性患者の話に、女性のがんに対する多角的取り
組みへの、内藤社長の決意の紹介が続きます。エーザイは2005年に、患者様第
一のhhc企業理念を定款に盛り込みました。企業の社会的価値創造を第一に
事業継続し、経済的価値も同時に創造する、という理念経営です。知識創造理
論がドライビングフォースになり、様々な分野でのイノベーションにつながる。
知創部がそのための仕組みづくりと人財育成を行っています。活動は社内、関
連企業・団体、行政、地域などを巻き込んで拡がっています。「認知症になっ
ても安心して暮らせるまちづくり」はその一例。

 以前のエーザイは、金と時間を注ぎ込んだブロックバスター薬に依存する資
本主義モデルでした。現在は、アンメット・メディカルニーズに真剣に取り組
む「はやぶさ(エーザイの2011年からの中期計画)」モデルです。WHOとの協
定や、パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)による、放置状
態の多くの疾患者に対するソリューション実現への挑戦が、アジアを中心に展
開中です。


 植木先生は本報告の意義と貢献を踏まえ、株主との関係変化、納得性につい
て質問されました。高山氏は、株主には貢献企業として参加して頂く。結果の
利益は確保する。水準は課題とのこと。
 またグローバル展開については、各国でプロダクトは異なり、すべて現地で
判断する体制としていること。投資回収モデルは、より長期的投資で10年後
回収するロジックとのことでした。


 あの元GE会長のジャック・ウェルチもリーマンショック後、短期指向の株主
価値優先の戦略が間違いであり、長期的企業価値の増大の結果が短期収益を生
む、と認めています。競争戦略のマイケル・ポーターはCSV、社会的価値と経
済的価値の両立を唱えています。エーザイの理念経営が豊かな社会的価値を生
み、その知が拡がっていくことが大いに期待されます。


14:05-14:40  研究報告2
「施策から見る中小企業の社会貢献」
堀田 充徳氏(中小企業基盤整備機構中小企業大学校)

 堀田氏の発表によれば、企業数で99.7%、従業者数で7割を占める日本の中小
企業。企業数は減少傾向で、大企業との生産性格差が拡大傾向にあります。政
策サイドとしては、中小企業を社会的弱者として扱うのではなく、経済的基盤
でありダイナミズムの源泉として捉えるべく、全国9カ所に中小企業大学校(
人材育成目的、1980年開校)を設置。地域特性に合った多様な地域発展モデル
を実現していくことで、地域社会にも貢献できる中小企業を育成する施策を展
開中です。

 今回は、東京における「地域生活課題解決モデル」についての、商店街競争
力強化支援、コミュニティビジネス支援、商店街診断実務の各種事例を交えた
紹介がありました。

 中小企業も点で捉えるのではなく、面、あるいはネットワークとして捉えて
いけば、様々な可能性があるように思われます。但し、行政の絡んだ施策では、
PDCAサイクルの特に後工程がきちんと回ることと、その見える化が重要になり
そうです。


14:40-15:15  研究報告3
「『知と行動の4行程』モデルによる人材育成モニタリングシステムについて」
安部 博文氏(電気通信大学)

 安部氏は、2010年の博士論文で認識した課題、「中小企業の経営革新の阻害
要因はコミュニケーション不全」に関する研究の中間報告です。経企庁の中小
企業経営革新促進事業に5万社が応募したが、半数が目標未達に終わった原因
をヒアリングし分析した結果、判明したそうです。

 その解決に向け、ガソリンエンジンの4工程に擬えた人材育成活動のモニタ
リングシステム、『知と行動の4工程』モデルを開発、提案し、実践研究中。
これをツールとして、人材育成の対象者とステークホルダー間のコミュニケー
ションを図るというものです。現状のデータでは様々な効果がみられるという
ことで、今後さらに実践データを収集し、よりツールとしての完成度を高めて
いく予定とのこと。期待されます。


15:15-15:35 【 休 憩 】


研究報告 司会 石川 昭(日本ナレッジ・マネジメント学会理事、青山学院
大学名誉教授)


15:35-16:10  研究報告4
「日本語の発展と日本的経営」
八代 英美氏((株)IMSコンサルティング)

 八代氏は、漢語や外来語を取り入れつつ柔軟に発展してきた日本語の特異性
が、日本企業の経営の考え方に与える影響を探ろうという、チャレンジングな
研究の発表でした。

 八代氏はKeio Globalで外国人留学生と接し、異文化コミュニケーションの
中で日本的経営を議論する中で、言葉の意味を、背景を踏まえて伝えることの
難しさなどを痛感し、このような問題意識を持ったとのこと。言語学、異文化、
知、知識創造、日本型経営など様々なキーワードが並びます。今後は、日本語
における知の要素を分析し、グローバル化に対応可能な日本語および日本的経
営の形を模索し、発展する日本語を日本的経営の知識創造に活かすことを目指
すとのこと。


 司会の石川先生からは、日本語の発展については従前より膨大な議論がある。
継続研究の成果をぜひ論文にまとめていただきたい、との激励の言葉がありま
した。


16:10-16:55 研究報告5
『企業の持続可能性を社会に伝え共有する統合報告』
報告1「国際統合報告協議会の活動とWICIの役割」
三代 まり子氏(国際統合報告協議会テクニカルマネジャー)

 三代氏の所属する国際統合報告協議会(IIRC)は、英チャールズ皇太子の呼
びかけで2004年に発足したAccounting for Sustainability Projectの一環と
して2010年誕生しました。

 さて、発表の内容ですが、企業の情報開示については従来から、単なる財務
情報では不足であり、非財務の知的資産や将来性を如何に反映するか、様々な
議論が各所で続けられています。

 IIRCでは統合的思考に基づき、財務情報に加え、環境や社会貢献、企業統治
などの情報を相互に関連付けた報告とし、将来にわたる企業の価値創造の全体
像を簡潔・明確に示すことを意図しています。背景には、投資家の短期志向化
と情報の乱立への反省、そして資本概念の拡大を図る意図があるとのこと。統
合報告はステークホルダー間のコミュニケーションプロセスであり、統合報告
書はそれらをまとめたもので、この4月半ばにコンサルテーションバージョン
が発表されるとの話でした。このような活動が着実に進展し、企業に過度の負
担をあたえることなく価値創造の全体像が示される方法論の実現が期待されま
す。


報告2「ベンチャービジネスに求められる統合報告」
 瀧口 匡氏(ウエルインベストメント(株) 代表取締役社長)


 瀧口氏は統合報告の実践サイドの報告です。知的資本の企業情報への反映に
ついて、1980年代からスカンディア証券を先頭に様々な取り組みが行われ
てきており、統合報告書は企業組織の主たる報告手段となるべき。但し、大企
業とベンチャー企業とでは報告内容が異なって然るべきではないか、との話で
した。
 大企業はサステナビリティが重要課題であるのに対し、ベンチャー企業は若
く成長性が命です。しかし、その将来像を効果的に伝えるツールが存在せず、
統合報告の課題である、と。例えばシンバイオ製薬は株価にIRが反映されず、
急成長の有望企業にもかかわらず資金集めに苦労している。一因には、ベンチ
ャー企業のスキャンダルが相次いだことが挙げられる。信頼性がカギであり、
そこをどう補っていくかが課題、とのことでした。


統合報告関連の発表について、花堂先生からのコメントがありました。

1.統合報告を追求していくことによって資本家、投資家の概念が変わる。シ
ェアホルダーをステークホルダーの枠組みに入れ込んでいくことになる。すな
わち、財務だけでなく、幅広い分野の外部関係者のモニタリングの仕組みを作
っていくという方向性である。

2.IIRCによる統合報告のフレームワークは、WICI(The World Intellectual
Capital Initiative:花堂先生が深く関与し、三代氏も所属)が準備していた
ものである。


 現在の株主資本主義がリーマンショックで大きな痛手を受けた後の方向性に、
統合報告の検討動向も一定の影響力を持つ可能性は大です。世界の企業や組織
体の実態動向と共に注目です。

閉会ご挨拶:日本ナレッジ・マネジメント学会副理事長 久米 克彦氏
 久米氏は昼の理事会において副理事長就任が承認され、新副理事長としての
ご挨拶でした。

要旨:本日は無事第16回の年次大会を盛大に開催することが出来、國學院大學
の先生方、ご講演の皆様、開催に協力いただいた皆様に感謝する。本学会は今
年も活発な活動を計画している、4月末には第5回TKFロシアを開催予定。各部
会もオープンな活動を行っていくので、積極的に参加して、ともに学会を盛り
上げていきましょう、と、呼びかけられました。

以上で、第16回年次大会は無事閉会しました。

執筆者後記:
 國學院大學という独特の歴史ある場での開催は、知的刺激が溢れる興味深い
大会でした。

 大学関係の方々をはじめ、企画、運営、講演・発表に関わられた皆様に感謝
し、敬意を表します。

 日本の至る所にあって日常的に人々がお参りする神社は、厄災を過去のもの
とし将来を祈願する場所。はじめに開祖や教典による形式知は不在で、自然信
仰を様式化したシステムであり、「式年遷宮」はその頂点の象徴。多分に暗黙
知的な形式知、様式の知を洗練しつつ継承していく。

 自然に恵まれた日本と繊細な感性を持つ日本人独特の伝統形式に思えます。


 「常若」も同様で、「常若」の理念の話を伺いながら、生命体の「動的平衡」
を思い浮かべました。個々の細胞の寿命は短いが、不断の新陳代謝により生命
体は長く維持されます。

 私たちも「常若」でありたいものです。豊かな自然環境に感謝しつつ感性を
磨き、新しい知に敏感で、常に学び自らを磨き、同時に過去の経験を今に活か
し、クリエイティブであること。

 資本主義概念が変ってきた、という指摘がありました。

 単なる儲け主義の株主も多い中、20世紀の成長主義や株主向け短期指向経営
よりも、目先にとらわれない持続可能性重視の長期指向の経営が改めて注目さ
れます。高い目標を掲げ、企業にかかわる様々なステークホルダーの理解を得
つつ、全体目標として持続可能な社会を目指すことになるでしょう。エーザイ
は知識創造企業として、その一つの方向性を敢然と試みています。統合報告の
形で経済社会のフレームを創る試みも、このような方向性を支持するに違いあ
りません。
(以上 進 博夫 記)

 

◆日本ナレッジマネジメント学会 第16回年次大会 研究部会の報告
(日本ナレッジマネジメント学会理事・多様性研究部会長 澤谷 みち子)
<研究部会報告>

日時  平成25年3月9日  13:30-17:00
場所  國學院大學 120周年記念1号館 1102教室

 午後からの研究部会報告は、関西、名古屋、そして東京の研究部会の発表が
1102教室という、比較的こぢんまりとした空間で、アットホームな雰囲気で進
められました。発表内容も古代の話から最先端のテクノロジーの話まで、幅広
い領域のテーマがそれぞれにユニークな切り口で発表が行われました。発表者
もそれぞれに個性あふれるプレゼンテーションで、刺激あり、笑いありの楽し
い時間となりました。特に、筒井真理子さんの発表はユニークで楽しい内容で
ありつつ、ナレッジマネジメントの新しい可能性を感じさせる内容で大変参考
になりました。各発表後の質疑応答では、単に質問への答えだけではなく、別
な視点での意見や提案もあったりして、和気藹々とした楽しい雰囲気の中で活
発な議論が更に知を深めるにふさわしい場になりました。


1.トランコムの研究  
西浦 道明氏(日本ナレッジマネジメント学会理事 アタックス代表取締役)

 名古屋を拠点とする物流サービス会社、トランコム株式会社をナレッジとい
う視点で分析した。

 1959年創業のトランコム株式会社は情報会社としてスタートし、その後継続
的に成長を続けているが、近年成長しているコアビジネスとして2000年以降は
物流情報サービス、2003年以降はロジスティックマネジメント事業がある。こ
うした成長を支えるトランコムの強みとして「社員力」があげられる。

 組織文化として成長の原動力となっているは次のポイントである。

・あかるく、楽しく仕事をしている
・当事者意識を持って行動している
・お客様に頼りにされている。期待に応えたい。自分がやらねばという思いの
強い社員が相当数いる。
・新しい分野への挑戦が普通のことと考える社員がいる
・社員一人ひとりが、会社は自分たちのものという意識を持っている

 こうした企業文化の背景には、かつて存在した「労使対決」型のマネジメン
トから「労使一体」型のマネジメントへの変遷があげられる。変化の転換点と
なったのはギリギリの労使交渉において、社長の強い思いが社員に伝わり、信
頼関係が構築されたこと。

 社長、武部芳宣氏の「企業観」が成長の原動力となっている

・人も企業も大きく豊かな「夢」を持つことが大切
・企業はビジョンを持ち、事業計画に落とし込み、全社員で共有し、仕事で実
践し続け、そのビジョン(夢)をかならず達成し、勝者にならなめればならない
・会社は「株主のもの」であるが「社員のもの」でもある
・企業目的は「社員の幸福を実現し」「永遠に存続すること」
・企業目的を達成するために「良質の利益」をあげる
・良質の利益は「顧客満足の結果」還元されるもの
・企業も「社会と共生」しなければ生きられない。


2.道(do)から学ぶ日本の強み 
小野瀬 由一氏(日本ナレッジ・マネジメント学会理事・アート部会長)

 アート部会は、優れた経営はアート的美しさを有し、美的経営が最高のパフ
ォーマンスを生み出すという仮説のもと、日本伝統の芸術・武道の知から日本
型KMのあるべき姿を学び、同時に西洋型KMとの比較研究により日本型KMの独自
性の研究を目指している。

(1)武道・芸道の確立の歴史
  宗教的背景を含め、それぞれの確立の歴史がわかりやすく説明された。

(2)芸道からの学び
  歌道、茶道、能楽道

(3)武道からの学び
  相撲道、弓道、柔道

(4)道(do)から学ぶ日本の強み
  形と革新の仕組み :幽玄、風姿花伝、五射六科、心技体
  場と継承の仕組み :家元制度、同盟段位制度

(5)日本伝統文化の強みを活かすグローバル企業KMの展望(まとめ)
・「精神的背景」の相互理解によるグローバル企業KM
・「形と革新の仕組」の導入によるグローバル企業KM
・「場と継承の仕組」の導入によるグローバル企業KM


3.歴史の転換点を迎えたスマート革命とサービス支配論理
山崎 秀夫氏(日本ナレッジ・マネジメント学会専務理事)
12345678901234567890123456789012345
 メイドインジャパンの崩壊という衝撃的な導入から、現在世界でどのような
イノベーションが進められているかを分かりやすく紹介いただいた

(1) 創造の経済の時代
家電崩壊=メイドインジャパン崩壊の歴史的意味
3つのTが創造性を発揮する
・技術革新のT…インターネットなどが支える
・才能のT…個人の眠り込まされた能力
・寛容のT…ゲイやボヘミアンに寛容な多様性社会、自己表現の自由

(2) 消費者インターネットから産業インターネットへの普及
2012 GE産業インターネット構想
アップルのビジネスモデルを重工業にあてはめる
コマツのコムトラックス:メーカーであると同時にサービス企業に変身

(3) 「モノ支配論理」から「サービス支配論理」へ
暗黙知の技術的側面「職人技、手の技」の時代の終焉
重要なのは暗黙知の認知的側面(アイディア)の時代が始まる

サービス支配論理の時代:寛容性、多様性、個の自律
「ゼロから学ぶスマート革命」 山崎秀夫 中央経済社
  

4.女性のキャリアを豊かに-組織に多様な成長を-
澤谷 みち子 (日本ナレッジ・マネジメント学会理事・多様性部会長
、一般社団法人ウィメンズメンターバンク代表理事)

 これまで多様性研究部会として女性・雇用形態、グローバルという視点で研
究活動を行なってきた。今回は、そうした活動の発展として今回設立した女性
活躍支援の取り組みを紹介する。

(1)設立の想い
働く女性の先輩として、次の世代を支援したい
キャリアの達成感、面白さ、楽しさを再認識しよう
私たちの気づき
 先輩の経験から自分自身の答えが生まれた
 キャリアの意味を考えることで、新たなモチベーションが生まれた
 やり続けるための励まし

(2)働く女性の今
労働力人口の減少  少子高齢化の未来
女性の労働力率   Mカーブの解消が再生への道
様々な場面で女性の活躍推進が語られているが、管理職となる女性があまりに
も少ないのが現状。

(3)ウィメンズメンターバンクの取り組み
女性の自律的な成長と長期的なキャリア構築を支援する仕組
・コミュニティ活動
・グループメンタリング
・パーソナルメンタリング
・メンタープログラム導入支援(法人)


5.「イノベーションの普及と知識マネジメント」
筒井 万里子氏(近畿大学経営学部准教授 日本ナレッジ・マネジメント学会
組織認識論部会)

 製薬会社のMRという視点から、具体的に同行取材を行うなどして得た情報を
元に、これまでのKMの分析単位とは異なる、組織のイノベーションという視点
で研究発表が行われた。

(1) 問題意識
 従来ナレッジマネジメントで扱っていた、分析単位(組織内部、組織間)や
対象とする現象(知識共有や知識創造)から、イノベーションの普及過程を研
究対象とする。

(2) これまでの研究報告 製薬会社の事例
2006年8月 医薬品の市場浸透の研究
「医局」に属する医師のインフォーマルな情報が重要な因子

2008年7月 MR間のコミュニケーションと製薬会社の競争優位性
大学担当MRは、医師からより多くの情報を入手している
大学担当MRはこうした情報を担当外のMRへ提供している

2009年8月 医薬品の普及と医薬品会社の競争優位性
製品の価値は「製品そのもの+使用に関する情報」
MR間の情報共有が結果としての医薬品が医者の教祖優位性につながっている

(3) 知識マネジメント研究とイノベーションの普及に関する研究の融合に
よる相互作用
・パーソナルネットワーク分析
 社会的感染:イノベーションの採用に伴う不確実性を解決するために他社の
見解を頼りにすること(Burt 1987)

 

◆第16回年次大会の写真集はこちらです。
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事 メルマガ編集長 松本 優)
 
http://www.kmsj.org/archive/20130309photo.pdf

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<編集後記>
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学会アドレス:kms@gc4.so-net.ne.jp
編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田 隆夫)
問合先 日本ナレッジ・マネジメント学会事務局
TEL:03-3270-0020 E-Mail:kms@gc4.so-net.ne.jp