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メールマガジン

No.77 2014年1月31日発行

 

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   日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 
   第77号  2014/1/31
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 編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目 次

◆第17回年次大会のご案内について
◆「21世紀のナレッジマネジメントの展開」の詳細報告
◆知の創造研究部会(第26回)の概要報告

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◆第17回年次大会のご案内について
(第17回年次大会プログラム委員長 植木英雄)

 来る2014年3月8日(土)に、横浜国立大学キャンパス内にて、本学会の第17
回年次大会 (9:30?17:20)を開催いたします。

★統一論題:「 経営者の知―ネットサービス型産業化への転換―」
 *基調講演として日本コカ・コーラ社の鈴木祥子副社長、
 *特別講演としてインテリジェントウェイブ社の安達一彦会長に講演をして
 頂きます。
 
 午後の大会プログラム案を以下に掲載いたします。
 なお、申し込み方法など詳細につきましては、本メルマガ2月号でご案内を
 いたします。

★Aトラック会場(統一論題関連)
*13:30-14:10 報告1:小石 裕介氏 (株)Beat Communication
 テーマ:「ネットサービス型産業への転換」
*14:15-14:55 報告2:砂金 信一郎氏(株)マイクロソフトエバンジェリスト
 テーマ:「マイクロソフトのベンチャー支援、ネット起業支援」
 14:55-15:10 【休 憩】
*15:10-15:50 報告3:山崎 秀夫氏  日本KM学会専務理事
 テーマ:「ネットサービス型産業化、スマート工業社会時代における
      新しいKMの課題」
*15:55-16:35 報告4:鹽野 敬彦氏 日本アイ・ビー・エム(株)部長
 テーマ:「IBMにおけるネットサービス時代のナレッジ・マネジメント」

★ Bトラック会場 (自由論題】
*13:30-14:10 報告1:西田 陽介氏 (株)日本経済研究所
 テーマ:「顧客の知とプラットフォームの構築」
*14:10-14:50 報告2:廣瀬 文乃氏 一橋大学大学院ICS特任講師
 テーマ:「企業の社会的価値創造に関する取り組み」
*14:50-15:30 報告3:安倍 博文氏 電気通信大学産学連携センター
           マネジャー、兼務講師
 テーマ:「連結化から始める知識創造―ホームページの 戦略的活用」
 15:30-15:35 【休憩】
*15:35-17:10 パネル討論会「知識創造に基づく企業組織変革の実践成果」
 事例報告:
 (1)日本リファイン(株)、(2)(株)ハートビーツ、
 (3)(株)新潟関屋自動車学校、(4)日本郵便(株)新潟中央郵便局
 (5)(株)長谷川ホンダ販売

★17:30-19:00 懇親会(参加費3000円を予定)

多くの会員のご参加をお待ちしております。

 

◆「21世紀のナレッジマネジメントの展開」の詳細報告
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事・メルマガ編集担当 松本 優)

 2013年11月25日(火)に、早稲田大学キャンパス小野記念講堂にて、早稲田
大学知的資本研究会及び日本ナレッジ・マネジメント学会の共催、株式会社
ICMG様の協賛にて、「21世紀のナレッジマネジメントの展開」(シンポジウム)
が開催されました。
 前号の本学会メルマガ第76号では実施内容の統括的報告を掲載いたしました
が、今号ではシンポジウムの詳細レポートを、写真付きでお送りいたします。
 なお、報告者として基調講演と第1セッションを久米副理事長に、第2、第
3セッションを山崎専務理事に、第4と総括セッションを矢澤理事にお願いし
ました。お忙しい中快く引き受けていただき、ありがとうございました。
 また、写真挿入と編集は松本がおこないました。

●「21世紀のナレッジマネジメントの展開」の詳細報告は、次のURLをご参照
ください。
http://www.kmsj.org/archive/20131125.pdf

 

◆知の創造研究部会(第26回)の概要報告
(知の創造研究部会長 植木英雄)

 2013年12月25日に開催された第26回研究部会では、二つの素晴らしい発表が
あり、21名の参加者を得て活発な質疑討論を行うことができ、また、忘年会に
も16名が参加して親睦交流を深めることができました。
 第1報告では廣瀬文乃会員に企業の社会的価値創造について、企業のソーシ
ャル・イノベーションに関する取り組みをCSRやCSVの流れを踏まえつつ、企業
の社会的価値創造を知識創造の観点で論じて頂きました。「ベネッセ・アート
サイト直島の現代美術による島おこし」と「くもん学習療法・くもん脳の健康
教室・公文式学習法を活用して認知症を改善・予防」に関する二つの興味深い
事例を発表して頂きました。
 第2報告では、日本アイ・ビー・エム社の鹽野敬彦会員から、IBM社の恒
例の世界のCXO経営者に対するサーベイ結果やソーシャル領域におけるKM
関連の最新の動向について海外取材の成果も交えて紹介して頂きました。また
、IBMのソーシャル・イノベーションの活性化でSNSメディアを活用した取り組
み方についての興味深い報告もありました。
 なお、今回の2つの報告概要と参加者の感想・コメントは、本学会員にとって
役立つと思われるので、取りまとめて紹介します。

★第1報告:社会的価値の共創:知域知縁のまちづくりの企業事例 
発表者:一橋大学大学院国際企業戦略研究科 特任講師 廣瀬文乃会員

 2000年ごろから先進諸国を中心に始まったソーシャル・イノベーションは、
企業、NGO/NPO、社会起業家などが、社会的課題をビジネスの手法を活用して
、革新的な方法で解決を図ることである。これまで、私は「知域知縁のまちづ
くり」をテーマに、地域の人々が主体のまちづくりについて発表してきたが、
今回は、企業が主体のまちづくりについて発表する。
 その前提として、ハーバード大学のポーター教授が提唱したCSV(共通価値
の創造)について概略する。CSVの背景には、企業のCSR(企業の社会的責任)
活動に対する批判がある。CSVとは、端的には、企業活動において経済的価値
と社会的価値をいかにバランスさせるか、ということである。しかし、これは
企業が考えるバランスであり、企業目線の価値創造である。一方、日本では「
三方よし」のように社会的価値創造を社是する企業も多く、企業は社会と共に
価値創造を行っている。これはドラッカーのCSRの考えにも近く、改めてCSVを
提唱する必要性はないのではないか。とはいえ、あのポーターが社会的価値に
注目した点は評価すべきだろう。
 ソーシャル・イノベーションや社会的価値の共創を知の創造という観点から
見ると、「衆知を結集する知識創造プロセス」とそれを推進する「実践知リー
ダー」たちの存在が欠かせない。企業が経済的価値を創造するには、「賢慮の
リーダー(野中・竹内、2011)」で示された実践知リーダーの6つの能力のう
ち、特に善い目的をつくり実践知を組織化することが重要である。これは社会
的価値の共創においても同じだと考えられる。
 こうした点を踏まえて、企業の社会的価値の共創の事例を2つ紹介する。
 「ベネッセ・アートサイト直島」は、ベネッセの創業者の息子、福武総一郎
が亡き父の遺志を継いで、瀬戸内海に浮かぶ直島、豊島(てじま)、犬島で進
めている事業である。それぞれの島の持つ美しい自然と過酷な歴史を現代美術
によって止揚するもので、現代美術という新しい風によって過疎化や高齢化に
よる島々の荒廃を防ぎ、世界から注目される観光地として再生した。現代美術
による島おこしという目的に向かって、アーティストや島の住民たちだけでな
く、観光客の知も取り込んでいる。
 「くもん学習療法」は、公文式学習法を活用した認知症の改善・予防である
。東北大学の川島教授の監修、研究の下、読み書き・計算によって脳の前頭葉
を活性化し、自主的に考える習慣づけを行い、達成感や充実感を得ることで高
齢者の生活の質の向上を図る取り組みである。高齢者の介護施設などで行われ
るが、学習療法をきっかけに高齢者と介護者の間のコミュニケーションが増え
、介護支援の質が変化し、支援者や施設間で自主勉強会が始まるなど、新たな
知の創造や交流が始まっている。
 事例から、CSVとは異なる形の、企業の社会的価値の共創があると言えるだ
ろう。企業の知だけでなく、地域の様々な知を包括的に結集し活用することが
カギであろう。

★第2報告:「IBMの知の共有化・協創のグローバル展開」
発表者:日本アイ・ビー・エム社人事・ラーニングナレッジ部署
マネージャー 鹽野敬彦会員

1.CXOからみた経営環境の「今」
 今後の知の共有化・協創のグローバル展開を考えるための前提として、IBM
が2003年から実施してきたCXOスタディー・シリーズの17回目のリサーチ結果
を参照すると、CXOが現在の経営環境を、以下のようにみていることが分かる

 CEOは、自社の将来に影響を及ぼす最も重要な外部要因が「テクノロジー」
であるとみており、「市場の変化」、「マクロ経済要因」、「人材・スキル」
が続く。「テクノロジー」の重要性は、2004年の第6順位から、徐々に順位を
上げてきており、この2年間は、最重要な外部要因となった。
 CEOは、今後、3?5年の内に、さまざまなステークホルダーとのコラボレ
ーションが促進されることが必要と考えており、このステークホルダーとして
は、サプライヤーのみならず、社員、顧客、外部のインフルエンサーが、幅広
く含まれる。
 このようにテクノロジーが、自社の将来に影響を及ぼす最も重要な外部要因
とされる環境下において、イノベーションの必要性は高まっており、特に、ス
テークホルダーを巻き込んだ協創を通じたイノベーションを促進するための仕
組みが重要となる。

2.IBMにおけるグローバルな知の共有化・協創の仕組み
 IBMでは、研究開発、コンサルティング、事業運営などを通じて得られたア
イディアを、知的財産やサービスなどの新たな付加価値のある事業成果へと昇
華させるプロセスを有している。そのプロセスは、産業、サービスやプロジェ
クトごとのコミュニティが基盤となっており、コミュニティでは、世界中のベ
ストプラクティスが登録され、共有され、再利用され、評価される。
 IBMでは、コミュニティを通じたLearningとKnowledge Managementを促進す
るための部門があり、ファイルのアップロード・ダウンロード数、フォーラム
への投稿数などを定期的に測定したり、特に、ビジネス上重要なコミュニティ
については、コミュニティを活性化するための改善促進策を打ったりする取組
みを行っている。
 IBMにおける知の共有化・協創は、何の変哲も無いプロセスを、愚直に運営
しているところに特長があると言える。

3.これからの知の共有化のあり方と自らの立ち位置
 このようにグローバル企業におけるイノベーションは、情報技術を駆使した
基盤上で、徹底した管理下で行われているが、一方で、昨今の情報技術の浸透
により、個人でも、イノベーションを起こす意思があれば、知の共有化と協創
によるグローバルなイノベーションに参画することが可能となっている。
 もし、自らがイノベーション人材として活躍したいと考えるのであれば、ク
リステンセン教授が指摘するとおり、自らが実現したいイノベーションに向け
て、必要な知を関連づける力、質問力、観察力、ネットワーク力、実験力をつ
ける必要がある。もっとも、必ずしも自らがイノベーション人材となる必要は
無く、追随者、研究者などの立ち位置を取ることも可能である。いずれにして
も、知の共有化・協創の進む社会における自らの立ち位置を考えることが、重
要な時期にある。以上。

●第26回 知の創造研究部会報告を聞いて(感想・コメント)

★安部 博文会員(電気通信大学 産学連携センター IM(URA)/非常勤講師、
法政大学大学院政策創造研究科 兼任講師)

 第26回研究部会では2つの素晴らしい内容の報告がありました。本稿では発
表内容の柱と興味深かった点とその理由、得られた気づきを今後どう活かすか
について述べたいと思います。 まず報告を聞く際の問題意識について説明し
ておきます。私は電気通信大学で学部生と院生を対象としたベンチャー論と約
20の基礎自治体の産業振興担当職員を対象とする地域産業振興講座を持ってい
ます。そこでこれらの受講生の学びのプラスになる材料を探したいという意識
があります。また電通大のインキュベーション・マネジャー(URA)として大
学発ベンチャーの支援も行っているので、この仕事のプラスになる材料に出会
いたいという意識があります。以下は、私の問題意識にインパクトを与えてく
ださった2つの報告について当日の発表順にご説明します。

1. 廣瀬文乃会員の発表を聞いて
1-1 内容 大きくは次の4点でした。
(1)M・ポーター氏が提唱する新しい概念CSR  (Creating Shared Value)と従
来からあったCSR  (Corporate Social Responsibility)の比較と説明。
(2)日本的経営の特長。
(3)野中理論の最新の状況の説明。
(4)2つの事例。
・ベネッセアートサイト直島。
・くもん学習療法。
1-2 興味深かった点
 廣瀬さんの発表で興味深かったのは上記の(2)と(4)でした。
(2)日本的経営の特長。
 CSVやCSRの概念と比較することによって上記(2)の日本的経営の特長とし
て、経営のあり方を長期的な視点で見る姿勢が浮き彫りになったという指摘に
、あ、そうかと新鮮に感じました。例えば三井物産では、仕事に対する定量評
価と定性評価の比率を2:8にしているそうです。三井物産のように、社会に新
しい価値をコラボレーションで共創しようとする場合、大切なのはOutput(定
量的な結果)ではなくOutcome(定性的な成果)という示唆が印象的でした。
 なぜここに興味を持ったのか、について説明します。ベンチャー論の受講学
生の多くは利益志向よりも社会価値追求の考え方を高く評価する傾向がありま
す。そこで学生にOutcomeを測定するにはどのような尺度があるかを想定させ
たり、あるいは良い尺度を持っているはずの日本企業が世界の競走の中で上位
を占められないのはなぜか、等について考えさせるのは良い思考トレーニング
になりそうだと思ったからです。
(4)2つの事例。
 事例の2つとも共に興味深い特長があります。ベネッセは地域おこしのイン
パクトを提供し続けていますし、くもん学習は高齢者の健康維持にプラス効果
をもたらしています。地域の過疎化、高齢化社会という日本が抱える社会課題
に対してスマートな形で解決策を提示しています。この取り組みにはこれから
の地域産業の振興を考える上でのヒントがありそうです。地域産業振興講座の
受講生を思い浮かべながら、二つのプロジェクトが持続する上で必要となる資
金的・人的リソースの源やお金の循環について考えさせるのも良いなと考えま
した。
1-3 今後どう活かすか
 講義で企業活動を論じるときの視点が「ビジネスモデル」や「利益追求」か
ら、「社会的意義のある事業を行った結果としての利益」へと変化しています
。利益追求だけでは問題が発生しやすい、かといって社会的意義だけを標ぼう
しても利益が出なければ継続性、発展性がありません。両者のバランスを取る
とはどういうことか、受講生と問題意識を共有していこうと思います。

2. 鹽野敬彦会員の発表を聞いて
2-1 内容 工夫を凝らした説明と別途配布資料もあり、楽しく拝聴しました。
とりわけ印象に残った論点は次の3点でした。
(1)IBMが考えるイノベーションとは
(2)IBMが継続的にイノベーションを起こすための仕組み
(3)2030年まで生き残れる仕事
2-2 興味深かった点
(1)IBMが考えるイノベーションとは
 IBMはイノベーションを「(顧客・株主・従業員・社会全体の)valueをadd
する new idea」と言い切っています。 さらにIBMがイノベーションと呼ばな
いものとして、「誰にも恩恵がない変化のための変化」「add valueというよ
りロスを減らす程度の先進事例の適用」「new ideaの応用がない価値創造」の
三つを挙げています。 そしてIBMが考えるイノベーションの類型として、「
製品やサービスのイノベーション」「バリューチェーンのイノベーション」「
ビジネスモデル(儲かる仕組み)のイノベーション」の三つを挙げています。
 すなわち、まずIBMのイノベーションとは何かを一言で言い切る。続いて非
イノベーションの例を示す。それからIBMのイノベーションの類型を示す。こ
のシンプルな力強さと論理展開にIBMの凄さとスマートさを感じます。ちなみ
にイノベーションのインパクトが一番大きいのは三番目だそうです。
(2)IBMが継続的にイノベーションを起こすための構造
 明確な構造と構造体を持たせないカオス的な仕組みの組み合わせを持ってい
る。前者がIBMのイノベーションのフレームワークというもので、イノベーシ
ョンを直接促進する3つのエンジンとして「市場開拓」「ビジネスモデル構築
」「プロセスと技術のオペレーション」があり、その3つの基盤として「継続
的促進機能Sustaining Enablers」が下支えしている構造です。 後者は、IBM
社内外のリソースから、イノベーションの種となるアイディアを生み出すカオ
ス的というかシナプス的なモデルです。
 くっきりと構造を持つものとぷにょぷにょした不定形なものを併せ持ちなが
ら、地球レベルのITシステムで人やアイディアをJammingして化学反応を促進
させる意図的な方法とマネジメントを行っているIBM。鹽野さんは「お客様の
心をつかむのに必要なのはロジックだけではありません。ハートが大事。だか
ら伝え方も相手によって変えます」と説明し、「そのため状況に応じて柔軟に
対応できるマインドとスキルを持つ人材育成の社内ニーズに応えるのが私たち
の仕事です」と結びました。
(3)2030年まで生き残れる仕事
 このトピックは学生向け講義(東京経済大学経営学部特別企画講義)からの
素材。これから多くの仕事が省人化・自動化されていきます。残るのは、創造
型、One to Oneサービス型そして専門型の3つ。学生が自分のキャリアプラン
を考えるきっかけ作りのために投げかけるそうです。
2-3 今後どう活かすか
 昨年11月から電通大のイノベーション活動を示す知のサイトを構築中です。
このサイトでは電通大発ベンチャーの事例やベンチャー教育・地域産業振興講
座の紹介、電通大卒業生やゲスト講師へのインタビューを中心にコンテンツリ
ッチな情報発信を目指しています。ホームページという古典的な媒体から、新
しいベネフィットを引き出す挑戦を目指しているタイミングでした。システム
的およびカオスを容認するアプローチでイノベーションを自ら創出するという
IBMの気概と行動を鹽野さんのイキイキとした発表から知ったことが、非常な
刺激になりました。ホームページ活動については、ナレッジ・マネジメントの
視点で整理し、今年3月の年次大会の報告としてチャレンジしたいと考えてい
ます。
 今回はお二人の含蓄と刺激に満ちた発表をお聞かせくださったことに心から
感謝いたします。また、素晴らしい内容の企画をご準備された部会長の植木英
雄先生に御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

★荒木聖史会員(日本電気通信システム株式会社 技術管理本部主任)
広瀬文乃会員の発表を聞いて

 最近CSRとCSVの違いをよく聞きますが、広瀬先生は前半の理論的な話で私の
頭の中を整理してくれました。
 後半はその理論を実践して成功した2つの事例について報告をされました。
会社が日々稼いでいるお金を社会善に振り向けて行こうというのが、CSR
(Corporate Social Responsibility)と呼ばれていたわけですが、業績が傾
くとあれほどその意義の重要性を声高に叫んでいた企業も背に腹は代えられず
とばかりに出資を絞っていきます。
「いいのか?それで」という疑問は当然のことであります。ただし、企業は
20年も「経済成長って何?」などという時代にいれば安定的なスポンサー
になれそうもありません。
 そこで、最近注目されるようになって来たのがCSV(Creating Shared
Value)というものです。つまり、CSR活動が本業以外の事業も含んでいた
のに対して、CSVでは本業で貢献していこうという話です。
 CSRとCSVは対立概念ではないのですが、廣瀬先生はその違いを明ら
かにすることで時代の要請の変化を明らかにしてくれました。すなわち、企
業が考え企業が創るのがCSRであり、企業と社会が共に考え事業を通じて
創っていくのがCSVということになります。
 こんなアルファベットの頭文字3文字を使用しなくても、実は日本人の社会
に刻み込まれた「近江商人の三方よし」の考えであったり、渋沢栄一や本田
宗一郎、松下幸之助など名経営者と呼ばれた人は誰しも社会を良くするため
の何らかの働きかけを行ったりしてきたものです。
 このような営利企業の経営者だけではなくNPOの代表も何らかのソーシャ
ル・イノベーションを起こすべく日々活動しています。社会的価値の共創は、
社会的価値を持ち、ビジネスアプローチと周知を結集する知の創造プロセス
を推進する実践知リーダーたちによって成されると廣瀬先生は言います。そし
て「より大切なのは、Output(定量的な成果)ではなくOutcome(定性的な成
果)」ではないのか、と問いかけます。
『ハーバードビジネスレビュー』Sep.2011によれば、実践知リーダーには
実践知リーダーシップの六つの能力、すなわち?良い目的をつくる、?あり
のままの現実を直観する、?場をタイムリーに創る、?直観の本質を物語化
する、?物語を実現する政治力、?実践知を組織化する、などが必要となる
そうです。
 この実践知のリーダーシップの能力こそがSECIスパイラルを推進する
ためのイネーブラーになる、とのことでした。
 また、そういった知の創造を促すためにダイナミック・フラクタル組織*を
提唱されています。そしてそのイノベーションの実例として、ベネッセ・アー
トサイト直島でのベネッセホールディングでの活動、日本公文教育研究会に
よる認知症の改善・予防の二つの例を紹介してくれました。
 事例の話も大変参考になりましたし、私の頭の中で最近、グルグルと回って
いた考えの断片のピースをきれいに並べ直してくれたような報告でした。
 時間が短かったために伝えきれなかったことも多くあったように思います。

(注)*ダイナミック・フラクタル組織とは、これは野中郁次郎・児玉 充・
廣瀬文乃 (共著論文)「知識ベースの変革を促進するダイナミック・フラクタ
ル組織 ―組織理論の新たなパラダイム― 」『一橋ビジネスレビュー』2012
 WIN.で新たな理論として提唱されているキーワードです。
「フラクタル」とは、複雑適応系理論で用いられる用語であり、自己相似すな
わち全体の形と相似する形で部分が出来上がっている、あるいはその部分を集
めて全体を作ると再び同じ形になるという意味です。 以上。

●第26回知の創造研究部会の写真集は、次のURLをご参照ください。http://www.kmsj.org/archive/20131225photo.pdf

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<編集後記>
メルマガの内容についてのご意見、ご感想及びメールアドレスの変更などは
以下のアドレスにお願いします。          (編集長 松本 優)

学会アドレス:kms@gc4.so-net.ne.jp
編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田 隆夫)
問合先 日本ナレッジ・マネジメント学会事務局
TEL:03-3270-0020 E-Mail:kms@gc4.so-net.ne.jp